Column

正しい嘘のつき方って何だろう

新年あけましておめでとうございます。
2022年は京都から始まった。
HOTEL THE KYOTO MITSUI という二条城の隣のホテルに2泊。
https://www.hotelthemitsui.com/ja/kyoto/

さてその帰り、新幹線の中で雑誌を読みながら考えていたことを整理する。
雑誌の内容はざっくりいうと
インドと中国の国境戦争があったりして軍事と経済はものすごく密接に結びついているよ。
インド人の土壇場のジュガールはすごいよ。
ってことが書いてあった。

この「ジュガール」という言葉。
僕もインドで働いている時に何度も聞いた。

ジュガール

機転を利かせ問題を解決すること。
臨機応変に最適な行動をとること。

自分の中での意味合いはこんな感じ。
全くたまったもんじゃないがこれに何度も苦労したし、助けられもした。
ホテルの部屋が55室しかないのに60とか予約取っちゃう。
そうやって乗り切るかって?
もちろんジュガール。
日本人の僕に全責任を押し付けたり、大嘘やはったりをかまして乗り切ったりする。
もちろん誰もにメリットが出るようなジュガールもある。
日本人の僕にはインドでの訳の分からない問題はすごく疲れるしそもそもジュガール使わなくていいようにしようよってことの連続。
だけどこのジュガール。
よく振り返るとすごいことだし、多分日本人は苦手。
なぜ苦手かは文化が影響していると思う。
古くから、義務教育で嘘はいけないこと。
誠実に生きなさい。
そんな風に習ってきた。
けどインドは違う。
人口も経済も急成長する国で波に乗り遅れたら簡単に排他されてしまうし、
明日を生きるのさえ苦しい人もいる。
厳しい環境でその場しのぎや機転を常に利かせて育った者と、
何不自由なく与えられて育ってきた者。
どちらが考える力、生きる力が強いかは火を見るよりも明らかだ。
生きるために関節を外してお金をせびる4歳の物乞いや、写真をわざと撮らせてお金を要求する子供たちもいる。

そんな環境で育つ子供が多いインドには多種多様な詐欺師がいて、日本人の同情を誘う文句を覚えていたり日本人を騙すために日本語を覚えたりする輩までいる。
旅行シーズンには全土からデリーに詐欺師が集まるとも言われている。
僕もインド詐欺師大全が作れるほどありとあらゆる詐欺にあってきた。
ただそれは生きる上でインドでは当たり前のことだしある程度はしょうがないと思う。
最初の2か月はただ騙されてきたがラスト1か月はインド人を翻弄するほど口もうまくなったしジュガールも覚えた。
目的地と違う方面進んでるなと思ったら迷わず無賃乗車で逃げるし、
破格な値段請求されたら泣くまで追い込んだりもしたし、
商品を1/10まで値切ったりもした。
それが正しい行動かは分からないが日本での生活では培うことのできない能力をたくさん身に着けることができた。
ジュガールもその一つ。

そして月日は流れ2022年。
新幹線のグリーン席という全く違う環境で「ジュガール」という言葉が再び僕の人生に現れた。
色んな事を回想しながら僕が考えたのは

正しい嘘のつき方って何だろう。

僕が小さいとき祖母からこんなことを言われたのを覚えている。

”優しい”とは正しい嘘のつき方をたくさん知っていることだよ。

僕も好きな言葉でたまに思い出す。
『正しい噓』どんな嘘が思い当たる?
友達を気遣う嘘。
恋人を気遣う嘘。
家族を気遣う嘘。
おそらく本当のことをあえて言わないで誰かを傷つけないようにする嘘が1番に思いつくと思う。
これは間違いなく正しい嘘のつき方だと自分は思う。
幸せなことに日本はこういった優しい嘘にあふれている。
ただ環境や条件が違ったらどうか。
家族を生かすために裕福な他人を騙すのは正しい嘘のつき方か。
親と兄弟どちらか一人しか助けられない。
こういう場面になったときなんて言うか。
自分が大変な時でも誰かを気遣える嘘がつけるだろうか。
日本では想像もできないような過酷な選択や状況が世界にはたくさんある。

正しい嘘のつき方は自分が想像しているよりももっとずっと深い所にごろごろ埋まっているのではないか。
そんなことを考えた2022年年始。